♬ライブレポート

2026年11月3日(火・祝)内藤晃ピアノコンサート2026蔵で味わうシューマンが開催されました。

築100年の土蔵。そこに静かに佇む、100歳のベヒシュタイン。ひそやかな空間で聴く、内藤晃さんのシューマン。

《蝶々 Op.2》《アラベスク Op.18》《ミルテの花 Op.25》歌曲から《献呈》《くるみの木》《はすの花》《君は花のよう》
《幻想小曲集 Op.12》

曲ごとに表情を変えながら、軽やかさ、憧れ、陰影、情熱――シューマンの豊かな世界が広がっていきました。何より印象に残ったのは、内藤さんの繊細さと迫力のバランスです。弱音では一音一音のニュアンスが際立ち、音楽が大きく動く場面では、身体の奥まで届くような力強さ。その変化がとても自然で、音楽に引き込まれていきました。音と音の間に生まれる余白も美しく、旋律が静かに息づいているよう。一方、音楽が高揚する場面では、音の厚みと推進力が一気に増していく。
それでも力任せにはならず、旋律の流れを保ったまま、土蔵の空間全体を揺らすような迫力へと変わっていきます。
歌曲では、言葉がなくても旋律から歌が聴こえてくるよう。特に《献呈》には、内藤さんの豊かな歌心が感じられ、心を動かされました。そして、100歳のベヒシュタインの深みのある低音と、どこか儚さを含んだ高音。その個性的な響きが、シューマンの世界によく似合います。指先から一本一本、音の糸を紡ぐように。細やかな音が連なり、やがて大きな響きとなって土蔵いっぱいに広がっていく。100年の時を重ねた空間とピアノに、内藤さんの演奏が新しい息吹を与えているようでした。演奏が終わったあとに残った静けさも、忘れられません。音が消えたあとまで、音楽が続いているような――。そんな余韻の残る、特別な演奏会でした。

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